

家具を選ぶとき、多くの方がまず見るのはデザインと価格、そして座り心地だと思います。ところがここ数年、家具の世界では「その家具は、壊れたときに直せるか」「使わなくなったとき、次の人に渡せるか」という視点が、急速に存在感を増しています。
以前の記事「2026年のインテリアトレンド」では、流行色や素材の質感など、内装の「見た目」の傾向を取り上げました。今回は家具そのものに目を向けて、家具が「どう作られ、どう選ばれ、どう使い継がれるか」という、もう一つのトレンドを整理します。
家具のトレンドというと、形や色の流行に目が行きがちです。しかし、その背景では、家具との付き合い方そのものが変わり始めています。
| 変化 | 背景 | 家具に表れていること |
|---|---|---|
| 「買い替える」から「直して使う」へ | EUが2025年4月、家具を「エコデザイン規則(ESPR)」の優先製品群に選定。耐久性や修理のしやすさなどの要件づくりが進む | ネジで組み立て・分解できる構造、交換できる部品、張地を外して洗える・替えられるカバーリング |
| 「新品」から「ヴィンテージ・中古」へ | 国内のリユース市場は2024年に約3.5兆円。環境省は2030年に4.6兆円へ広げる工程表をまとめている(2026年2月報道) | 昭和のレトロ家具や北欧・ミッドセンチュリーのヴィンテージ家具を、張り替え・再塗装して使う人が増えている |
| 「固定」から「組み替えられる」へ | 引越しや家族構成の変化、在宅ワークなど、暮らし方の変化に家具が追いつけるようにしたいというニーズ | ユニットを足し引きできるモジュールソファ、棚板や支柱を組み替えられるシェルフ |
3つに共通しているのは、家具を「一度買ったら終わり」ではなく、「長く使い、使い回すもの」として考える流れです。この考え方は「サーキュラーデザイン(循環型のデザイン)」と呼ばれています。
サーキュラーデザインとは、製品をつくる段階から、修理・再利用・リサイクルまでを見越して設計する考え方です。これまでの「つくる→使う→捨てる」という一方通行(リニア型)に対して、使い終わった後も製品や部品、素材が循環し続ける仕組みを目指します。

家具は、大きくて重く、自治体の粗大ごみとして処分されることが多い製品です。一方で、木や金属、布といった、手を入れれば何十年も使える素材でできていることも少なくありません。座面の張り替えや脚のぐらつきの補修、表面の削り直しと再塗装ができれば、家具の寿命は大きく延びます。
EUのエコデザイン規則では、家具についての具体的な要件(委任法)の採択が2028年ごろに予定されています。日本の家具にすぐ影響するものではありませんが、海外の家具メーカーが「修理しやすさ」や「部品の入手しやすさ」を製品づくりの前提にし始めていることは、家具選びの目安として知っておいて損はありません。
では、実際に家具を選ぶとき、どこを見れば「直せる家具」かどうかがわかるのでしょうか。お店やショールームで確認しやすいポイントをまとめました。
| チェック項目 | 見るところ | 長く使えるかどうかの理由 |
|---|---|---|
| 組み立て方 | 脚や背もたれがボルト・ネジで留められているか、接着剤やタッカー(ホチキス状の針)だけで固定されていないか | ネジで留めてある部分は、ゆるみの締め直しや部品の交換ができる。分解できれば、引越しの搬入出も楽になる |
| 張地・クッション | カバーを外せる「カバーリング」か、張り込み(固定張り)か。クッション材の交換に対応しているか | ソファや椅子は、フレームより先に張地やウレタンが傷む。カバーリングならカバーだけの交換も可能。張り込みでも、張り替えに対応する工房に頼める作りかを確認 |
| 木部の仕上げ | 無垢材か、突板(薄くスライスした木を貼ったもの)か、木目調のシートか | 無垢材は表面を削って再塗装しやすい。突板は削れる厚みに限りがあり、シートは削り直しができない |
| 部品とメンテナンス | メーカーが修理・張り替え・部品販売を受け付けているか。品番が長く継続している定番品か | 長く作り続けられている定番品ほど、部品やカバーが手に入りやすく、修理の実績もある |
| サイズの考え方 | ユニットの追加・取り外しができるか。分割して運べるか | 住み替えや部屋の使い方が変わっても、組み替えて使い続けられる |
価格の安い家具がすべて悪いわけではありません。ただ、「何年使うつもりか」「傷んだとき、どこを直せばよいか」を買う前に一度考えておくと、結果的に買い替えの回数と費用を減らすことにつながります。
ミッドセンチュリーモダンの家具や、昭和のレトロ家具の人気が続いています。同じデザインに見えても、流通しているものにはいくつかの種類があり、修理のしやすさや価格が異なります。
| 種類 | 特徴 | 選ぶときに確認したいこと |
|---|---|---|
| ヴィンテージ(当時もの) | 数十年前に製造された実物。年月を経た木や革の風合いがあり、一点ごとに状態が異なる | フレームのぐらつき、クッション材の劣化、張り替え・再塗装の有無。修理済みかどうかで価格と安心感が変わる |
| 正規品(現行生産) | デザイナーや権利者から製造の許諾を受けたメーカーが、現在も作り続けているもの | 部品・張地の交換や修理をメーカー経由で頼めることが多い。保証の内容を確認 |
| デザインを似せた製品 | 有名な家具の形を参考にした、比較的安価な製品 | 素材や構造が簡略化されている場合があり、修理を前提にしていないものもある。構造と張地の仕様を確認 |
ヴィンテージ家具は、「古いからこそ、すでに一度は修理されている」ことも多い家具です。購入するときは、どこが当時のままで、どこに手が入っているかを販売店に聞いてみると、長く付き合えるかどうかの判断材料になります。
住まいの家具は、建物と一体でつくる「造作家具」と、あとから置く「置き家具」に分けられます。サーキュラーデザインの考え方は、この2つの役割分担にも当てはまります。
壁面収納や造り付けのベンチ、キッチンカウンターなどの造作家具は、建物と一緒に長く使うものです。だからこそ、扉の丁番やレール、天板など、消耗する部分を交換できるようにしておくことが大切です。金物を汎用品にしておく、天板をビス留めにして取り外せるようにする、といった配慮で、将来の補修がずっと楽になります。
一方、ソファやダイニングテーブル、椅子などの置き家具は、住み替えのときに持っていったり、次の人に譲ったりできるものです。造作で固めすぎず、暮らしの変化に合わせて動かせる余地を残しておくと、家具も住まいも長く使いやすくなります。
都市部の狭小住宅では、階段や廊下の幅、窓の大きさによって、大きなソファやダイニングテーブルが搬入できないことがあります。分解できる家具や、ユニットに分かれるモジュール家具は、狭小住宅とも相性が良い選択肢です。気に入った家具がある場合は、設計の段階で寸法をお知らせいただければ、搬入経路も含めて検討できます。
当事務所では、住宅や店舗の設計の際に、スケッチアップ(CGソフト)で置き家具も含めて空間を立体化し、家具の大きさや配置、動線を確認しながら計画を進めています。お手持ちの家具やヴィンテージ家具を新しい住まいで使い続けたい、というご相談にも、寸法や素材感を合わせた内装のご提案で対応しています。
家具も建物も、「直しながら長く使う」ことで愛着が深まるものです。新築・リノベーション、店舗の内装と家具計画をご検討の方は、お気軽にご相談ください。
参考:European Commission「Ecodesign for Sustainable Products and Energy Labelling Working Plan 2025-2030」(2025年4月16日)、環境省のリユース促進工程表に関する報道(2026年2月11日)。EUの家具に関する要件の内容・時期は、今後の検討により変わる可能性があります。
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