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住宅の水害対策|ハザードマップの読み方から、設計でできる浸水の予防と被害軽減まで

2026/09/29

住宅の水害対策 アイキャッチ

毎年のように「線状降水帯」「記録的短時間大雨」という言葉を耳にするようになりました。大きな川の近くでなくても、側溝や下水があふれて住宅地が浸水する被害は珍しくありません。

水害は地震と違い、どこまで水が来るかをある程度事前に予測できる災害です。だからこそ、敷地選びや設計の段階で「高さ」と「素材」を工夫すれば、被害を大きく減らすことができます。今回は、ハザードマップの読み方から、新築・リノベーションで取り入れられる具体的な対策までを整理します。

 

まず知っておきたい、住宅を襲う水害のタイプ

ひとくちに水害といっても、原因によって起こり方が違います。対策を考える前に、自分の敷地でどのタイプが起こりうるかを確認しておきましょう。

 

種類 起こり方 住宅で起こりやすい被害
外水氾濫(洪水) 河川の水位が上がり、堤防を越える・決壊する 広い範囲で深い浸水。流れが強い場所では家屋の損壊も
内水氾濫 大雨を下水道や水路が排水しきれず、市街地にあふれる 周囲より低い土地や道路より低い敷地での床下〜床上浸水、排水口からの逆流
高潮・津波 台風や地震で海面が上昇する 沿岸部での浸水。海水による設備の腐食
土砂災害 大雨で斜面が崩れる、土石流が発生する がけや渓流の近くでの建物の損壊

 

見落とされがちなのが内水氾濫です。大きな川から離れていても、周囲より低い土地や、道路より敷地が下がっている住宅では起こりえます。

 

ハザードマップの「浸水深」を読む

ハザードマップでは、想定される浸水の深さが色分けで示されています。自治体によって区分や色は異なりますが、おおむね次のような目安で表現されています。

 

浸水深 建物への影響の目安 設計で考えたいこと
0.5m未満 床下浸水程度(大人の膝くらいまで) 基礎の高さや盛土で、床上浸水を避ける
0.5〜3m 1階の床上から1階の軒下まで浸かる 1階の設備・仕上げは浸かる前提で計画し、2階へ逃げられる動線を確保する
3〜5m 2階の床下から2階部分まで浸かる 建物だけで守るのは難しい。早めの避難が前提
5m以上 2階の軒下以上まで浸かる 敷地選びや住まい方そのものから検討する

 

あわせて確認したいのが、「家屋倒壊等氾濫想定区域」と「浸水継続時間」です。前者は、堤防が決壊したときの強い流れや河岸の浸食で、家屋が倒壊するおそれがある範囲。後者は水が引くまでの時間で、長いほど2階に避難しても孤立した状態が続くことになります。

 

浸水深の目安と、設計でできる対策の断面イメージ

 

設計でできる対策は「避ける・防ぐ・耐える」の3段階

水害への備えは、次の3段階で考えると整理しやすくなります。上の断面図の①〜⑥と対応しています。

 

1. 避ける:水が届かない高さに住まいをつくる

高基礎はコストがかかりますが、コンクリートの立ち上がりを仕上げれば、外観のデザイン要素として見せることもできます。

 

2. 防ぐ:水の入り口をふさぐ

 

3. 耐える:浸かっても早く復旧できるようにする

 

■ 水害に備えるための、住まいのチェックポイント

  • ハザードマップを確認する:洪水・内水・土砂災害のマップをそれぞれ見て、想定浸水深と浸水継続時間を把握します
  • 敷地と道路の高さを見る:前面道路や隣地より低くないか、雨の日の水の流れを観察します
  • 重要な設備の位置を確かめる:分電盤・給湯器・室外機が、想定浸水深より低い位置にないか確認します
  • 排水口の逆流に備える:1階のトイレ・浴室・床排水用に、水のうなどを用意しておきます
  • 保険の補償内容を確認する:火災保険に水災補償が付いているか、補償の条件はどうかを見直します
  • 避難のタイミングを決めておく:建物で守れる範囲を超える場合に、いつ・どこへ逃げるかを家族で共有します

 

マンション・既存住宅のリノベーションでできること

建物の高さそのものを変えにくい既存住宅やマンションでも、リノベーションの機会に取り入れられる対策があります。

令和元年東日本台風(台風19号)では、高層マンションの地下に設置された電気設備が浸水し、停電によってエレベーターや給水設備が使えなくなった事例がありました。これを受けて、国土交通省と経済産業省は2020年6月に「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」をとりまとめています。

 

知っておきたい、水害と住まいに関する制度

 

制度・動き 時期 内容
建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン 2020年6月 国土交通省・経済産業省がとりまとめ。洪水などのときにも電気設備の機能を保つための対策の考え方を整理
不動産取引時の水害リスクの説明 2020年8月〜 宅地建物取引業者が行う重要事項説明で、水害ハザードマップにおける物件の所在地の説明が義務化
火災保険の水災料率の細分化 2024年10月〜 全国一律だった水災補償の保険料が、市区町村ごとの水災リスクに応じた5段階の区分に

 

家を買う・建てるときには、こうした制度や保険の情報も判断材料になります。

 

まとめ:水害対策は、敷地を知ることから始まる

水害対策の基本は、自分の敷地に、どんな水が、どのくらいの深さで来る可能性があるかを知ることです。そのうえで「避ける」「防ぐ」「耐える」を組み合わせれば、建物と暮らしへのダメージを小さくできます。

ただし、想定浸水深が深い地域では、建物だけで命を守ることはできません。設計による備えと、早めの避難の両方が大切です。

当事務所では、敷地のハザード情報や浸水履歴等を確認したうえで、基本瀨設計を始めています。新築やリノベーションで水害への備えが気になる方は、お気軽にご相談ください。

参考:国土交通省・経済産業省「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」(2020年6月)、国土交通省「水害対策を考える」、損害保険各社・報道による2024年10月の火災保険水災料率改定に関する記事。浸水深の区分は一般的なハザードマップの凡例による目安で、実際の区分は各自治体のハザードマップでご確認ください。

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