
「AIで家の設計はできるようになるのか」――最近、打合せの場でそんな質問をいただくことが増えました。画像生成AIで外観パースが数秒で出てくる時代です。気になるのは当然だと思います。
当事務所でも、日々の業務の中で生成AIを使う場面が少しずつ増えています。ただ、実際に使ってみて感じるのは、「AIが得意な仕事」と「建築士が責任を持つべき仕事」ははっきり分かれているということです。今回は、設計事務所の実務のどこでAIが役に立ち、どこでは使わないのか、設計のフェーズごとに整理してみます。
帝国データバンクが2026年3月に実施した調査(有効回答10,312社)では、生成AIを活用している企業は全体で34.5%。業種別に見ると、サービス業の47.8%に対して、建設業は26.4%にとどまっています。
同じ調査で、活用している業務の上位は「文章の作成・要約・校正」「情報収集」「企画立案時のアイデア出し」。一方、課題の第1位は「情報の正確性」(50.4%)でした。この傾向は、設計事務所で使ってみた実感ともよく一致しています。
当事務所での使い方と考え方を、フェーズごとにまとめると次のようになります。
| フェーズ | AIに任せやすいこと | 建築士が判断すること |
|---|---|---|
| ヒアリング・企画 | 打合せメモの要約、要望の整理、イメージ写真の方向性づくり | 要望の優先順位、敷地と予算に対して何を取り、何を諦めるか |
| 基本設計 | 外観・内観のイメージスケッチ、素材の組み合わせのバリエーション出し | プラン、ボリューム、法規(斜線・天空率・容積率)、構造の骨格 |
| 実施設計 | 仕様書・特記事項の下書き、メーカー資料の要約、比較表の作成 | 納まり、寸法、構造・設備との整合、防火・避難の仕様 |
| 確認申請 | チェックリストの作成、図書の書式や表記ゆれの確認 | 法適合の判断そのもの(AIの回答は根拠条文・告示で必ず裏取り) |
| 工事監理 | 定例会議の議事録作成、写真の整理 | 現場での是正判断、施工者への指示 |
共通しているのは、AIは「たたき台をつくる」「整理する」作業に強く、「決める」「責任を持つ」作業には向かないということです。特に法規については、それらしい条文番号や数値を示してくることがあるため、そのまま使うことはしていません。
設計事務所でAIが最も役に立つと感じるのは、実は図面そのものより、お施主様とのイメージのすり合わせです。
「コンクリート打放しの外観に、焼杉の板張りを少しだけ入れたい」「ニューヨークのロフトのような、天井の高いLDKにしたい」――こうした言葉のイメージは、人によって思い浮かべるものが違います。画像生成AIで素材や光の雰囲気が異なる案を短時間でいくつも並べると、「こっちの色味が近い」「この照明の感じは違う」と、言葉だけでは出てこない好みが見えてきます。
ただし、画像生成AIのパースは寸法も構造も法規も考慮されていない「雰囲気の絵」です。そこで当事務所では、次のように役割を分けています。
以前の記事「計画敷地に完成予想CGの合成」でご紹介したCGの作り方に、AIの工程が加わったイメージです。形は設計が決め、雰囲気の表現をAIが手伝う、という順番を崩さないことを大切にしています。
■ AIを使ううえで当事務所が決めているルール
AIとあわせて押さえておきたいのが、確認申請のデジタル化です。2026年4月から、BIMで作成した設計データから出力したPDFの図面とIFCデータをあわせて提出する「BIM図面審査」の運用が始まりました。現時点ではIFCデータは参考扱いで、審査の中心はPDFの図面ですが、図面間の整合チェックの一部を省略でき、審査期間の短縮が期待されています。
国土交通省は、2029年春を目途に、IFCデータそのものを審査対象とする「BIMデータ審査」への移行を目指すとしています。
| 段階 | 時期 | 内容 |
|---|---|---|
| BIM図面審査 | 2026年4月〜 | BIMから出力したPDF図面とIFCデータを提出。IFCは参考扱い |
| BIMデータ審査 | 2029年春(目標) | IFCデータそのものを審査対象とする方向で検討中 |
設計の情報が「図面の絵」ではなく「データ」として扱われるようになると、法規チェックや数量の集計、さらにはAIによる設計支援も、そのデータを土台に進んでいくはずです。小規模な住宅でも、立体モデルで設計を進めておくこと自体が、これからの設計の品質に直結していくと考えています。
当事務所では、スケッチアップによる立体での検討を軸に、AIはイメージのすり合わせや資料づくりの補助として取り入れています。AIのおかげで短くなった時間は、敷地を読み込むことや、素材のサンプルを手に取りながらの打合せ、現場での確認に使うようにしています。
「こんな雰囲気の家にしたい」というイメージがまだ言葉にならない段階でも、画像を一緒に見ながら整理していくことができます。新築・リノベーションをご検討の方は、お気軽にご相談ください。
参考:帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」、文化庁「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日 文化審議会著作権分科会法制度小委員会)、国土交通省の建築確認におけるBIM図面審査に関する公表資料。各AIサービスのデータの取扱いは、利用規約・設定により異なります。
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