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設計事務所のAI活用|基本設計から確認申請まで、フェーズ別の使いどころと線引き

2026/09/24

「AIで家の設計はできるようになるのか」――最近、打合せの場でそんな質問をいただくことが増えました。画像生成AIで外観パースが数秒で出てくる時代です。気になるのは当然だと思います。

当事務所でも、日々の業務の中で生成AIを使う場面が少しずつ増えています。ただ、実際に使ってみて感じるのは、「AIが得意な仕事」と「建築士が責任を持つべき仕事」ははっきり分かれているということです。今回は、設計事務所の実務のどこでAIが役に立ち、どこでは使わないのか、設計のフェーズごとに整理してみます。

 

建設業のAI活用は、まだ始まったばかり

帝国データバンクが2026年3月に実施した調査(有効回答10,312社)では、生成AIを活用している企業は全体で34.5%。業種別に見ると、サービス業の47.8%に対して、建設業は26.4%にとどまっています。

同じ調査で、活用している業務の上位は「文章の作成・要約・校正」「情報収集」「企画立案時のアイデア出し」。一方、課題の第1位は「情報の正確性」(50.4%)でした。この傾向は、設計事務所で使ってみた実感ともよく一致しています。

 

設計フェーズ別・AIの使いどころ

当事務所での使い方と考え方を、フェーズごとにまとめると次のようになります。

 

フェーズ AIに任せやすいこと 建築士が判断すること
ヒアリング・企画 打合せメモの要約、要望の整理、イメージ写真の方向性づくり 要望の優先順位、敷地と予算に対して何を取り、何を諦めるか
基本設計 外観・内観のイメージスケッチ、素材の組み合わせのバリエーション出し プラン、ボリューム、法規(斜線・天空率・容積率)、構造の骨格
実施設計 仕様書・特記事項の下書き、メーカー資料の要約、比較表の作成 納まり、寸法、構造・設備との整合、防火・避難の仕様
確認申請 チェックリストの作成、図書の書式や表記ゆれの確認 法適合の判断そのもの(AIの回答は根拠条文・告示で必ず裏取り)
工事監理 定例会議の議事録作成、写真の整理 現場での是正判断、施工者への指示

 

共通しているのは、AIは「たたき台をつくる」「整理する」作業に強く、「決める」「責任を持つ」作業には向かないということです。特に法規については、それらしい条文番号や数値を示してくることがあるため、そのまま使うことはしていません。

 

いちばん効果が大きいのは「イメージのすり合わせ」

設計事務所でAIが最も役に立つと感じるのは、実は図面そのものより、お施主様とのイメージのすり合わせです。

「コンクリート打放しの外観に、焼杉の板張りを少しだけ入れたい」「ニューヨークのロフトのような、天井の高いLDKにしたい」――こうした言葉のイメージは、人によって思い浮かべるものが違います。画像生成AIで素材や光の雰囲気が異なる案を短時間でいくつも並べると、「こっちの色味が近い」「この照明の感じは違う」と、言葉だけでは出てこない好みが見えてきます。

 

ただし、画像生成AIのパースは寸法も構造も法規も考慮されていない「雰囲気の絵」です。そこで当事務所では、次のように役割を分けています。

以前の記事「計画敷地に完成予想CGの合成」でご紹介したCGの作り方に、AIの工程が加わったイメージです。形は設計が決め、雰囲気の表現をAIが手伝う、という順番を崩さないことを大切にしています。

 

■ AIを使ううえで当事務所が決めているルール

  • 個人情報・敷地情報を入力しない:お施主様のお名前、住所、地番、図面データなどは、学習に使われない設定・契約のサービス以外には入力しません
  • 法規・数値は必ず一次情報で確認:AIの回答は「調べる手がかり」として扱い、建築基準法・条例・告示の原文や行政の解説で裏取りします
  • 既存の建築作品に似せない:文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月)でも、AI生成物が既存の著作物に類似し、依拠していると認められれば、通常と同様に著作権侵害となりうると整理されています。特定の建築家や作品名を指定したプロンプトは使いません
  • AI画像であることを伝える:イメージ画像をお見せする際は、実際の設計とは異なる参考画像であることを明示します

 

BIM図面審査のスタートで、設計データの価値が上がる

AIとあわせて押さえておきたいのが、確認申請のデジタル化です。2026年4月から、BIMで作成した設計データから出力したPDFの図面とIFCデータをあわせて提出する「BIM図面審査」の運用が始まりました。現時点ではIFCデータは参考扱いで、審査の中心はPDFの図面ですが、図面間の整合チェックの一部を省略でき、審査期間の短縮が期待されています。

国土交通省は、2029年春を目途に、IFCデータそのものを審査対象とする「BIMデータ審査」への移行を目指すとしています。

 

段階 時期 内容
BIM図面審査 2026年4月〜 BIMから出力したPDF図面とIFCデータを提出。IFCは参考扱い
BIMデータ審査 2029年春(目標) IFCデータそのものを審査対象とする方向で検討中

 

設計の情報が「図面の絵」ではなく「データ」として扱われるようになると、法規チェックや数量の集計、さらにはAIによる設計支援も、そのデータを土台に進んでいくはずです。小規模な住宅でも、立体モデルで設計を進めておくこと自体が、これからの設計の品質に直結していくと考えています。

 

当事務所での取り組み

当事務所では、スケッチアップによる立体での検討を軸に、AIはイメージのすり合わせや資料づくりの補助として取り入れています。AIのおかげで短くなった時間は、敷地を読み込むことや、素材のサンプルを手に取りながらの打合せ、現場での確認に使うようにしています。

「こんな雰囲気の家にしたい」というイメージがまだ言葉にならない段階でも、画像を一緒に見ながら整理していくことができます。新築・リノベーションをご検討の方は、お気軽にご相談ください。

 

参考:帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」、文化庁「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日 文化審議会著作権分科会法制度小委員会)、国土交通省の建築確認におけるBIM図面審査に関する公表資料。各AIサービスのデータの取扱いは、利用規約・設定により異なります。

 

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