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狭小地のマンション・アパート設計|「共同住宅」か「長屋」かで変わる戸数と条例のルール

2026/09/23

駅に近い小さな土地で、賃貸マンション・アパートを建てたい――そんなご相談をいただくことが増えています。当事務所でも、これまでにコンクリート打放しの賃貸マンションや、高低差のある小さな敷地での店舗併用賃貸マンションを計画してきました。

狭小地の集合住宅は、戸建て住宅と違い「何戸・何㎡取れるか」がそのまま事業性に直結します。そして、その戸数を左右するのは、プランの工夫よりも先に「建物の形式の選び方」と「条例のルール」であることが少なくありません。今回は、狭小地のマンション・アパート設計で最初に押さえておきたいポイントを整理してみます。

 

最初の分かれ道は「共同住宅」か「長屋」か

同じ「アパート」でも、建築基準法上は共同住宅(共用の廊下・階段を使って各住戸に出入りする形式)と、長屋(各住戸が共用部を持たず、直接外部に出入りする形式)に分かれます。重層長屋のように、2階の住戸へ専用階段で上がる形式も長屋に含まれます。

どちらを選ぶかで、かかるルールが大きく変わります。

 

項目 共同住宅 長屋
出入りの形式 共用廊下・共用階段から各住戸へ 各住戸の出口から直接屋外へ(専用階段を含む)
建築基準法上の扱い 特殊建築物 特殊建築物ではない(条例で上乗せ規制あり)
容積率 共用廊下・共用階段は容積率不算入 各戸の専用階段・通路は原則として床面積に算入
神奈川県建築基準条例の例 床面積に応じて道路に接する長さの上乗せ(100㎡超200㎡以内で3m、200㎡超500㎡以内で4m、500㎡超1,000㎡以内で5m) 各戸の主要な出口は道に面するか、道まで幅3m(2戸以下の専用通路は2m)以上の敷地内通路が必要
東京都建築安全条例の例 窓先空地(第19条)の確保が必要 長屋としての別の規定(出口・通路など)がかかる

 

旗竿地や間口の狭い敷地では、共同住宅にすると接道長さの条件を満たせず、長屋にすると敷地内通路の幅で住戸が削られる、ということが起こります。敷地の形を見た段階で、両方の形式でボリュームを比べておくことが、狭小地では特に大切です。

 

容積率の緩和を使い切る

狭小地では、容積率のわずかな差が住戸数に影響します。住宅系の用途には、延べ面積に算入しなくてよい部分がいくつか定められています。

 

対象 不算入の限度 狭小地での使いどころ
共同住宅の共用廊下・共用階段 限度なし 共同住宅形式を選ぶ大きな理由のひとつ
エレベーターの昇降路 限度なし 4〜5階建てでEVを設ける場合の負担を軽減
住宅の地階(天井が地盤面から1m以下など) 住宅部分の床面積の1/3まで 半地下住戸・メゾネットで容積を上乗せ
自動車車庫・駐輪場 延べ面積の1/5まで 1階ピロティ駐輪場など
宅配ボックス設置部分 延べ面積の1/100まで 単身者向け賃貸では設置がほぼ前提

 

ただし、容積率を使い切っても、道路斜線・北側斜線・日影規制で高さが抑えられては意味がありません。以前の記事「計画建物の検討(天空率編)」でご紹介した天空率の検討とあわせて、容積と高さの両方から「建てられる最大ボリューム」を立体で確認することが重要です。

 

■ 東京都の「窓先空地」が令和7年4月に見直されました

東京都建築安全条例では、共同住宅の住戸の居室の窓の前に、避難や採光のための空地(窓先空地)を設け、そこから道路まで避難経路を確保することが求められています。狭小地では、この空地が建物の奥行きを大きく削る要因でした。

令和7年4月1日施行の改正で、窓先空地の幅員をそれぞれの空地が面する住戸の面積で算定できるようになったほか、2階以上でバルコニー等による代替の避難経路が確保されている場合には「窓先の空間」として扱い、1階が共同住宅以外の用途であれば、その下に建築物や植栽を設けられるようになりました。

1階を店舗・駐輪場とする都内の狭小地の計画では、使える床が増える可能性があります。具体的な寸法の扱いは特定行政庁の運用によりますので、計画の早い段階で確認が必要です。

 

狭小地のプランニングで意識していること

形式とボリュームが見えたら、次はプランです。狭小地の集合住宅で、当事務所が特に気をつけているのは次の点です。

 

当事務所での取り組み

当事務所では、狭小地の集合住宅のご相談をいただくと、まずスケッチアップ(CGソフト)で敷地と法規制を立体化し、共同住宅案・長屋案など複数のボリュームを並べて、戸数・住戸面積・延べ面積を比較するところから始めています。

同じ敷地でも、形式の選び方ひとつで取れる戸数が変わり、賃料収入や建築費のバランスも変わります。土地の購入前や建替えの検討段階でも、ボリュームの検討は可能です。狭小地での賃貸マンション・アパートの計画をお考えの方は、お気軽にご相談ください。

 

参考:建築基準法第52条(容積率)、建築基準法施行令第2条、神奈川県「神奈川県建築基準条例等の解説」、東京都都市整備局「東京都建築安全条例の改正について(令和7年4月1日施行)」。条例の内容は自治体ごとに異なり、横浜市・相模原市など独自の建築基準条例を定めている市もあります。

 

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