

「この土地にアパートやマンションは建てられますか?」「30坪くらいの土地で、何戸くらい取れますか?」――土地活用や投資用マンションのご相談で、最初にいただくことが多い質問です。
当事務所はこれまで、東京都内の30〜60坪ほどの狭小地で、小規模な投資用マンション(賃貸の集合住宅)を設計してきました。実際の事例では、約33坪の土地で6戸、約41坪の細長い土地で13戸の計画が実現しています。ただし、戸数は土地の広さだけでは決まりません。
この記事では、戸数が決まる仕組みを5つのステップで整理し、当事務所の3つの設計事例で「土地の広さ・形と戸数」の関係を比べます。
「狭小地」に法律上の決まった定義はありませんが、ここでは集合住宅の敷地としては小さめの30〜60坪程度の土地を想定します。まずは、当事務所が設計した3つの賃貸集合住宅を並べてみます。
| 事例 | 土地の広さ・形 | 構造・階数 | 戸数 | 延床面積 |
| TSD(世田谷区) | 約33坪・2つの道路に面する | 壁式RC造 3階建て | 6戸 | 約206㎡ |
| OIG(大田区) | 約41坪・間口7.0m×奥行19.0mの細長い形 | 軽量鉄骨造 4階建て | 13戸(1ルーム) | 353.19㎡ |
| MKY(世田谷区) | 約60坪・旗竿状で四方を隣地に囲まれる | 軽量鉄骨造 3階建て | 11戸(1ルーム+1LDK) | 361.20㎡ |

土地10坪あたりの戸数に直すと、TSDとMKYは約1.8戸、OIGは約3.2戸です。いちばん広いMKYより、細長いOIGの方が戸数は多くなっています。この差がどこから生まれるのかを、次の5つのステップで見ていきます。

戸数は、土地の条件から順にふるいにかけるように絞られていきます。どこか1つでも厳しい条件があると、そこで上限が決まります。
同じ40坪でも、正方形に近い土地と、間口の狭い細長い土地、旗竿地とでは、建物の置き方がまったく変わります。共同住宅には条例で道路に接する長さの上乗せがかかることがあり、旗竿地(路地状敷地)では路地状部分の幅によって建てられる建物の規模や形式が制限されることもあります。共同住宅と長屋のどちらの形式にするかでも条件が変わるため、詳しくは以前の記事「長屋と共同住宅の違いとは?」をご覧ください。
容積率は、敷地面積に対して建てられる床面積の割合です。用途地域ごとに都市計画で指定されていますが、前面道路の幅が12m未満の場合は、道路の幅による上限もかかり、どちらか小さい方が適用されます。
前面道路の幅(m)× 係数 = 容積率の上限
※特定行政庁が指定する区域では係数が異なる場合があります。用途地域の考え方は「用途地域はなぜ重要?」でも紹介しています。
たとえば、敷地100㎡(約30坪)、第一種住居地域で指定容積率300%の土地を例に、前面道路の幅だけを変えて比べると次のようになります。
| 前面道路の幅 | 道路による上限 | 適用される容積率 | 容積率の対象になる床面積 | 1戸25㎡とした場合の戸数の上限 |
| 4m | 4×0.4=160% | 160% | 160㎡ | 6戸 |
| 6m | 6×0.4=240% | 240% | 240㎡ | 9戸 |
| 8m | 8×0.4=320% | 300%(指定容積率の方が小さい) | 300㎡ | 12戸 |
同じ土地の広さ・同じ用途地域でも、道路の幅だけで戸数の上限が2倍近く変わります。なお、共同住宅の共用廊下・共用階段は容積率の計算に含めなくてよいため、容積率の対象になる床面積はおおむね住戸部分の面積と考えられます。ただし、これはあくまで容積率から見た上限で、実際には次の高さ制限や建ぺい率で、さらに少なくなるのが普通です。
容積率に余裕があっても、建物の高さは道路斜線・隣地斜線・北側斜線(低層・中高層住居専用地域など)や、日影規制で抑えられます。狭小地では、上の階を斜めに削ったり後退させたりする必要が出やすく、上の階ほど住戸が取りにくくなるのが特徴です。斜線制限は天空率という方法で緩和できる場合もあり、以前の記事「計画建物の検討(天空率編)」で紹介しています。
1フロアの広さは、敷地面積×建ぺい率が上限です。敷地100㎡・建ぺい率60%なら1フロア60㎡までで、そこから階段や廊下を差し引くと、ワンルームで1フロア2戸程度が目安になります。戸数を増やすには階数を上げることになりますが、何階まで建てられるか、どの構造を選ぶかは、防火地域・準防火地域の指定や建築費とも深く関わります。構造の選び方は、このシリーズの次の記事で詳しく取り上げる予定です。
最後に、1戸あたりの広さと住戸の種類で戸数が決まります。自治体によっては、ワンルーム形式の集合住宅に最低住戸面積や、駐輪場・ゴミ置場・管理体制などを求める条例・指導要綱があります。東京都では共同住宅の窓先空地も必要です。小さな住戸を増やせば戸数は増えますが、条例の下限や入居者のニーズとのバランスを見ながら決める必要があります。
3つの事例からわかるのは、戸数の多さだけが正解ではないということです。駅からの距離や周辺の賃貸住宅の状況によって、ワンルームを多く取るのか、1LDKを混ぜて長く住んでもらうのかが変わります。入居者に選ばれるための考え方は、以前の記事「集合住宅のデザイントレンド」でも紹介しています。
当事務所では、狭小地の投資用マンションのご相談をいただくと、まずスケッチアップ(CGソフト)で敷地と法規制を立体化し、建てられる最大のボリュームと、住戸の取り方の違う複数の案を並べて、戸数・住戸面積・延床面積を比較するところから始めています。
土地の購入前や、建替えを決める前の段階でも、ボリュームの検討は可能です。事業収支や資金計画は金融機関・税理士などの専門家とご相談いただきながら、当事務所は「どれだけの規模・戸数の建物が建てられるか」と「選ばれる建物の設計」の面からお手伝いします。狭小地・旗竿地での投資用マンションをお考えの方は、お気軽にご相談ください。
この記事で紹介した3つの投資用マンション(賃貸集合住宅)です。
参考:建築基準法第42条第2項(道路の後退)、第52条(容積率)、第53条(建ぺい率)、第56条(斜線制限)、第56条の2(日影規制)、建築基準法施行令第2条。記事中の戸数の計算は考え方を示すための例で、実際の計画では条例・敷地の条件により異なります。条例の内容は自治体ごとに異なりますので、計画の際は最新の情報をご確認ください。
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