

「小さな土地にマンションを建てるなら、木造・鉄骨・RCのどれがいいですか?」――投資用の小規模マンションのご相談で、戸数の次によくいただく質問です。
前回の記事「狭小地に投資用マンションは建つ?」では、土地の広さ・形から戸数が決まる仕組みを整理しました。シリーズ2回目の今回は、その戸数を実現するための構造の選び方を、木造・軽量鉄骨造・壁式RC造を中心に比べます。
3〜4階建て程度の小規模な集合住宅では、主に次の5つの構造が使われます。まずは全体の傾向を表で比べてみます。
| 構造 | 階数の目安 | 遮音性 | 間取りの自由度 | 工期 | 建物の重さ |
| 木造 | 2〜3階 | 工夫が必要 | 比較的高い | 短め | 軽い |
| 軽量鉄骨造 | 2〜3階程度(4階の例も) | 工夫が必要 | 規格寸法の中で計画 | 短め | 軽い |
| 重量鉄骨造 | 3階以上も対応 | 中程度 | 高い(柱の間隔を広くとれる) | 中程度 | 中程度 |
| 壁式RC造 | 地上5階以下 | 高い | 壁の位置が変えにくい | 長め | 重い |
| RCラーメン造 | 中高層まで対応 | 高い | 高い | 長め | 重い |

狭小地では、柱や梁が室内に出っ張ると住戸の使い勝手に直接響きます。その点、壁で建物を支える壁式RC造は室内がすっきりしやすく、柱・梁の断面が小さい木造や軽量鉄骨造は、細長い敷地でも住戸を並べやすいのが特徴です。
表の傾向をふまえて、実際の計画で構造を決めるときに確認したい条件を4つに整理します。
構造を選ぶときに最初に確認したいのが、防火地域・準防火地域の指定と階数です。求められる防火性能が上がるほど、構造の選択肢が絞られ、建築費にも影響します。
建物に求められる防火性能は、主に次の2つの組み合わせで決まります。
※実際の計画では、条件の細部や自治体の条例を個別に確認する必要があります。
たとえば準防火地域の3階建てなら、木造・軽量鉄骨造・RC造のいずれも候補になります。一方、4階建ての共同住宅になると耐火建築物が必要になり、鉄骨造では柱や梁に耐火被覆を施す必要があります。
RC造は木造や鉄骨造に比べて建物が重く、地盤が弱い場所では杭などの地盤対策の費用が大きくなることがあります。土地の購入前や計画の初期に、近隣の地盤データや地盤調査で状況をつかんでおくと、構造の判断がしやすくなります。
集合住宅で入居者の不満につながりやすいのが、上の階の足音や隣の住戸の生活音です。重いコンクリートの床や壁を持つRC造は遮音に有利で、木造や軽量鉄骨造では、床の仕上げや天井の構成、界壁のつくり方で性能を補う設計が欠かせません。賃料や入居期間にも影響するため、構造と一緒に検討したいポイントです。
工期は、部材を工場でつくる軽量鉄骨造や木造が短めで、現場でコンクリートを打つRC造は長めになります。また、事業計画に関わるのが税務上の法定耐用年数です。住宅用の建物では、構造によって次のように定められています。
| 構造(住宅用) | 法定耐用年数 |
| 木造 | 22年 |
| 鉄骨造(骨格材の肉厚3mm以下) | 19年 |
| 鉄骨造(骨格材の肉厚3mm超4mm以下) | 27年 |
| 鉄骨造(骨格材の肉厚4mm超) | 34年 |
| 鉄筋コンクリート造 | 47年 |
法定耐用年数は減価償却や融資の期間の目安として使われるもので、建物が実際に使える年数ではありません。事業収支や税務の判断は、金融機関や税理士にご相談ください。
前回の記事でご紹介した3つの事例も、それぞれ構造が異なります。
| 事例 | 土地 | 構造・階数 | 戸数 |
| TSD(世田谷区) | 約33坪・2つの道路に面する | 壁式RC造 3階建て | 6戸 |
| OIG(大田区) | 約41坪・間口7.0m×奥行19.0m | 軽量鉄骨造 4階建て | 13戸 |
| MKY(世田谷区) | 約60坪・旗竿地 | 軽量鉄骨造 3階建て | 11戸 |
TSDは壁式RC造で、コンクリート打放しに杉板調の特殊塗装を組み合わせた外観が特徴です。OIGとMKYは軽量鉄骨造で、細長い敷地や旗竿地でも1ルームを中心に戸数を確保しています。同じ「小規模マンション」でも、土地の条件と事業の考え方によって、選ぶ構造は変わります。
当事務所では、敷地の条件と法規制を整理したうえで、木造・軽量鉄骨造・RC造など複数の構造でボリュームと戸数を比べ、構造設計者とも相談しながら最適な構造をご提案しています。木造を選ぶ場合の構造の基準については、以前の記事「壁量計算の改正で何が変わる?」で、木造住宅の壁量の基準の見直しを紹介しています。
次回は、シリーズ3回目として「入居者に選ばれる小規模マンションの設計」を取り上げる予定です。狭小地・旗竿地での投資用マンションの構造や計画について、お気軽にご相談ください。
参考:建築基準法第27条・第61条、建築基準法施行令第136条の2、平成13年国土交通省告示第1026号(壁式鉄筋コンクリート造)、減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一。記事中の比較は一般的な傾向で、実際の計画では敷地・地盤・法規制によって異なります。条例の内容は自治体ごとに異なりますので、計画の際は最新の情報をご確認ください。
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